今回は、相続の放棄をした者が、相続の開始した年に被相続人から贈与を受けていた場合の生前贈与加算の取扱いについて、纏めたいと思います。
1、生前贈与加算制度の概要 相続又は遺贈によって財産を取得した人が、その相続の開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により財産を
取得したことがある場合には、その取得した財産(非課税財産を除く。)の価額(贈与を受けた時における価額)を相続税の課税価格に加算した価額を課税価格とみなしてその者の算出相続税額を計算し、その贈与によりすでに課された贈与税額があるとは、その算出相続税額から贈与税額を控除することとされているものです(相法19①)。
なお、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始の年中において被相続人から贈与を受けた財産の価額で、相続税の課税価格に加算したものは、贈与税では、課税価格に算入されず、非課税となります(相法21の2④)。
これは、被相続人が相続開始間際に行った贈与には、ある程度死後のことを考慮して財産を分割し、相続税の負担の軽減を図ることを目的として行われたものもあると考えられることから、相続又は遺贈によって財産を取得した人がその相続の開始前3年以内に贈与を受けたものをその人の相続税の課税価格に加算することにしているものです。
2、事例 (1)長男は、平成27年9月15日に甲から、現金1,000万円の贈与を受けた。
(2)甲は、その後平成27年10月10日に死亡した。
(3)長男は、被相続人甲の相続について、相続の放棄をし、所定の手続きを行った。
(4)長男は、生命保険金等のみなし相続財産の取得もない。
3、生前贈与加算等の取扱い (1)生前贈与加算について
この規定の適用を受ける者は、被相続人甲から相続又は遺贈により財産を取得した者ですが、長男は、相続を放棄したことにより、被相続人甲から相続又は遺贈により財産を取得していないことから、当該規定の適用を受けることはありません。
そのため、長男が被相続人甲から贈与を受けた1,000万円については、被相続人甲の相続財産に含める必要はないことになります。
(2)贈与税の課税について
(1)で記載したように、長男が贈与を受けた1,000万円については、被相続人甲の相続財産として相続税が課税されることはありません。
ただし、贈与を受けた長男の贈与税が非課税とされるのは、相続又は遺贈により財産を取得した場合に限られるため、相続を放棄したことにより相続又は遺贈により財産を取得していないことから、長男が贈与を受けた1,000万円については、贈与税が課税されることとなります。