相続QA021

Q.遺産分割協議が一向に進みません。相続税の申告はどうすればいいですか?

相続税の申告期限までに遺産分割が調わない場合


 相続税の申告書は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、納税地の所轄税務署長に提出することになっています。
 災害その他やむを得ない事由があったこと等により、相続税の申告書を法定申告期限までに提出できない場合には、税務署長等の職権又は納税義務者からの申請により、法定申告期限を延長することができますが、遺産分割が調っていないという理由で、申告期限を延長することはできません。
 そのため、分割協議が成立していないときは、各相続人が、民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし(相法55)、申告と納税をします。

 同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した相続人等が2人以上いる場合は、共同で相続税申告書を作成し、連署して提出することができますが(相法27⑤、相令7)、申告書の共同提出についても意見が合わないときは、申告期限までに各人が単独で申告書を作成し、提出することになります。

 遺産の全てが分割されていない状態で申告した場合、以下のような相続税法上の優遇措置が受けられず、相続税が割高になってしまいます。
 そのうえ、未分割の不動産は管理売却等に相続人全員の同意を必要とするためその処分も困難で、また未分割の状態では預貯金も原則として払戻ができないため、納税資金や債務の返済資金等を別途工面する必要が出てきます。

   (1)  配偶者の税額軽減(相法19-2①)
           配偶者の法定相続分と1億6千万円とのいずれか多い金額まで、相続税が減額されますが、少なくとも配偶者の取
        得財産が確定していることが要件となります。

   (2)  小規模宅地の評価減(措法69-4①)
         一定の要件を満たした事業用及び居住用の宅地等について、50%又は80%の評価減が適用されますが、その宅
        地等について分割されていることが要件になっています。

   (3)  物納
         相続税の納付につき、金銭で納付することが困難で、延納でも困難である場合不動産等の財産で納付することが
        できますが、未分割の財産については管理処分不適格として物納が認められません。

   (4)  農地等の納税猶予(措法70-6)
         農業相続人が相続した農地等が一定の要件に該当する場合、農地等の価格のうち農業投資価格を超える部分に
        対応する相続税額の納税が猶予されます。

   (5)  非上場株式等についての相続税の納税猶予(措法70-7-2)
         後継者である相続人が、相続等により一定の要件を満たした非上場株式等を先代経営者である被相続人から取
        得し、その会社を経営していく場合、その非上場株式等(一定の部分に限る。)に係る課税価格の80%に対応する相
        続税の納税が猶予されます。

   (6)  相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(措法39)
         相続した財産を相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合、当該資産の譲渡所得の計算上、その資
        産に課された相続税相当を取得費に加算することができますが、3年以内に分割されていない場合には適用を受け
        ることができません。

 このうち(1)及び(2)の規定は申告書の提出と同時に「相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出書」を提出することにより、適用が可能です。この場合、相続税の申告期限から3年以内に更正の請求書又は修正申告書を提出することとされています。
 また、3年以内の期間においてもなお分割が出来なかった場合において、やむを得ない事情があることにより所轄税務署長の承認を受けようとする場合は、その3年を経過する日の翌日から2か月以内に、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出することができます(措法70-6)。この場合、分割ができることとなった日の翌日から4か月以内に更正の請求書又は修正申告書を提出する必要があります。
 やむを得ない事情とは、以下①から④のような事情により、客観的に遺産分割ができないと認められるものをいいます。

  ① 相続又は遺贈に関する訴えの提起がされている場合(相法令4-2)
  ② 相続又は遺贈に関する和解、調停又は審判の申立てがされている場合
  ③ 相続又は遺贈に関し、遺産の分配が禁止され又は相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されている場合など
  ④ その他、税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合
    (共同相続人等のうちの一人又は数人が行方不明又は生死不明であり、かつ、その者にかかる財産管理人が選任されて
     いない場合や、精神又は身体の重度の障害疾病のため加療中であること、又は海外に勤務するなどして帰国できない
     場合など)(相法基通19-2-15)

まとめ
 上記税法上の特例は、全ての財産が分割されている必要はなく、該当する財産が分割されていれば適用を受けられるものが殆どですので、適用を受ける財産の分割を優先して行うといった工夫も必要です。
 とはいえ、遺産分割を先延ばしにすると、相続財産が散逸したり、相続人が死亡して更に権利関係が複雑になることもあり得ます。
 共同相続人の協議による方法では分割協議が調わない場合、家庭裁判所に請求して分割してもらうことができます。
その方法として「調停の申立」と「審判の申立」があります。
 調停が成立すればそれにより、調停が成立しないときは審判により、裁判所の権限で分割されることになります。
 調停又は審判等は、申告期限から3年を経過しても未分割であることについてのやむを得ない事情として認められていますので、共同相続人間での分割が困難な場合は、速やかにこのような手続きに移行することも考えておくべきでしょう。




 

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