事業承継QA06

従業員持株会③ 種類株式について

 前回及び前々回は、相続・事業承継対策の観点から、従業員持株会の活用・運営方法についてまとめましたが、今回は、従業員持株会における種類株式の活用方法についてまとめてみたいと思います。

I. 種類株式の概要
   
   種類株式とは、普通株式とは異なる権利や内容を持つ特別な株式であり、会社法では、次の9つの種類を規定しています
  (会社法第108条1項)。

  (1) 剰余金の配当
      ⇒(例)配当優先(劣後)株式
  (2) 残余財産の分配
      ⇒(例)残余財産分配優先(劣後)株式
  (3) 株主総会において議決権を行使することができる事項
      ⇒(例)議決権制限株式
  (4) 譲渡制限
      ⇒(例)譲渡制限株式
  (5) 株主による取得請求権
      ⇒(例)取得請求権付株式
  (6) 会社による一定の事由の発生を条件とする取得条項
      ⇒(例)取得条項付株式
  (7) 会社が株主総会の決議によってその全部を取得できること
      ⇒(例)全部取得条項付株式
  (8) 特定の事項につき拒否権をもたせること
      ⇒(例)拒否権付株式(黄金株)
  (9) 取締役・監査役の選解任
      ⇒(例)役員選解任権付株式

 これらの種類株式を活用することによって、相続・事業承継対策としての従業員持株会スキームがさらに安定的、かつ、効果的なものになります。
 今回は、上記の種類株式うち3種類(Ⅱ.配当優先株式、Ⅲ.議決権制限株式、Ⅳ.拒否権付株式)と上記の種類株式には該当しないものの、会社法上、種類株式とみなされる属人的株式について、それぞれの活用方法をまとめてみたいと思います。


II. 配当優先株式(会社法第108条1項1号)

  (1) 概要
    配当優先株式とは、普通株式に優先して配当を受ける権利を有する株式です。
   一般的には、以下のような類型に区分され利用されます。

    <参加型・非参加型>
     ・参加型…優先配当を受けた後、普通配当を受けることができる。
     ・非参加型…優先配当のみ受けることができ、普通配当を受けることができない。

    <累積型・非累積型>
     ・累積型…当期の優先配当の不足分が翌期以降に繰り越される。
     ・非累積型…当期の優先配当の不足分が当期で切り捨てられ、翌期に繰り越されない。

  (2) 従業員持株会における活用方法
    相続・事業承継対策として従業員持株会を利用することで、自社株評価額の引き下げ効果を得ることができますが、従業
   員持株会を単なる節税目的のために「形式的」に利用することはできず、会員である従業員に対する福利厚生制度として、
   実態の伴った運用をする必要があります。
    そこで、オーナーが従業員持株会に譲渡する株式を「配当優先株式」にすることで、従業員は普通株式に比べて優先的に
   配当を受けることができるため、従業員に対する福利厚生制度としての意味合いを強めることができます。
   ※議決権制限株式との組み合わせによる利用については、以下Ⅲ(2)に記載。


III. 議決権制限株式(会社法108条1項3号)

  (1)  概要
    議決権制限株式とは、株主総会において議決権を行使することができる事項について他の株式と異なる定めをした内容
   の株式です。つまり、議決権の全て又は一部の行使について制限を付した株式です。
    公開会社には、発行済株式総数の2分の1以下の発行しか認められておりませんが、非公開会社には、この制限は課され
   ていないため、2分の1超の議決権制限株式を発行することができます。

  (2)  従業員持株会における活用方法
    オーナーが従業員持株会等へ株式を譲渡すると、オーナーの所有割合が減少し、支配権も減少することになります。そこ
   で、オーナー所有の株式を議決権制限株式に変更し、当該株式を従業員持株会等に譲渡することにより、オーナーの所有
   割合は減少(=自社株評価減)するものの、議決権割合は減少しないため、支配権を維持することができます。
    なお、従業員持株会へ譲渡する株式は、議決権制限株式と上記Ⅱ.配当優先株式を組み合わせて、「優先配当の議決権
   制限株式」として利用することが一般的です。従業員は、保有していても経営に大きな影響力を与えることのできない数%の
   議決権を放棄することで、普通株式に比べて高配当を受けることができるので、従業員にとってもメリットがある株式といえ
   ます。


IV. 拒否権付株式(黄金株)(会社法108条1項8号)

  (1)  概要
    拒否権付株式とは、会社の合併や取締役の選任等の重要な事柄について拒否できる権利を有する株式であり、拒否でき
   る内容は、自由に定款に定めることができます。例えば、次のような事項を指定することができます。

   ► 定款変更
   ► 合併、株式交換、株式移転、会社分割、事業譲渡、事業譲受
   ► 重要な資産の譲渡・譲受
   ► 新株発行・新株予約権発行
   ► 剰余金の配当 
   ► 取締役の選任・解任

  (2)  従業員持株会における活用方法
    オーナー保有株式を従業員持株会等に譲渡することでオーナーの所有割合が減少し、会社に対する支配権も減少(いず
   れは消滅)することになりますが、拒否権付株式を発行し保有しておくことで、所有比率が下がった場合でも、会社に対して
   一定の影響力を維持することができます。
    また、経営者としての経験が乏しい後継者の場合には、後継者が誤った判断をしないように、成長するまでの一定期間、
   元オーナーが拒否権付株式を保有することで、経営判断における最後の砦となることができます。
    なお、拒否権付株式は、あくまで提案された議案に対する「拒否権」であるため、議案の「提案」等の積極的な関与はでき
   ない点に留意する必要があります。


V. 属人的株式(資格株)

  (1)  概要
    会社法では、公開会社でない会社は、①剰余金の配当、②残余財産の分配、③議決権について、株主ごとに異なる取扱
   いを行う旨を定款で定めることができる、と規定されています(会社法第109条2項、第105条1項)。この①~③の権利につ
   いて株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款に定めた株式を「属人的株式」といい、会社法上、種類株式とみなされます(会
   社法第109条3項)。
    属人的株式は、定款で定められた特定の人が持つ場合にのみ、特別の扱いが機能する株式であるため、権利が「株式」
   ではなく、「人」に属している株式といえます。

  (2)  従業員持株会における活用方法
    例えば、オーナーが保有する株式の一部について、オーナーが保有する場合に限り1株当たりの議決権を10個とする属人
   的株式に変更します。オーナーは、普通株式を譲渡して、属人的株式を引き続き保有します。これにより、所有割合は減少
   するものの、議決権は所有割合に比して減少しないため、譲渡する普通株式の数を調整することで、自社株の所有比率を
   減少させながらも、引き続き支配権を維持することが可能になります。

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