- TOP
- 事業継承QA05
事業承継QA05
従業員持株会② 設立・運営方法について
前回は、相続・事業承継の観点から、非上場会社における従業員持株会のメリット・デメリットをまとめましたので、今回は、従業員持株会の設立・運営方法について、まとめてみたいと思います。
I. 従業員持株会の概要
従業員持株会を設立する場合には、主に以下の2パターンが考えられます。いずれの方法による場合でも、実質的な内容に大きな違いはありませんが、現在は、民法上の組合として設立することが一般的になっています。そのため、下記Ⅱ以降については、民法上の組合を前提として記載しています。
民法上の組合 |
任意団体 (信託銀行の場合) |
|
法律形態 |
・民法667条の規定に基づき設立 ・法人格は持たない |
・法人格は持たない |
拠出金の性格 | ・出資 | ・信託財産 |
税務上の取扱い |
・持株会=法人税課税なし ・会員が受ける配当金=配当所得 |
・持株会=法人税課税なし ・会員が受ける配当金=配当所得 |
管理コスト |
・自社で事務管理を行う場合には、 追加的な管理コストは不要 |
・信託銀行に対する管理コストが必要 |
II. 従業員持株会の設立
従業員持株会設立までの一連の手続きについて、以下に概要を記載します。
1. 検討事項
従業員持株会の設立にあたっては、事前に以下の事項等を検討する必要があります。
1. 検討事項
従業員持株会の設立にあたっては、事前に以下の事項等を検討する必要があります。
検討事項 | ポイント |
従業員持株会の株式保有比率 |
・支配権確保と節税対策とのバランス ・種類株式の発行 |
株式供給方法 |
・オーナー所有株式の譲渡 or ・第三者割当増資 |
出資金の拠出方法 |
・定時拠出(給与天引きによる拠出) or ・臨時拠出(会員の手持資金による拠出) or ・併用方式 |
奨励金の支給 | 支給の有無、支給金額(通常は拠出金額の3~10%程度) |
2. 発起人候補者等の選出
► 理事長及び理事会の役員候補者を選出します。
3. 事務管理方法の決定
► 従業員持株会の運営に係る事務管理を自社又は外部委託のいずれにより行うかを決定します。
► 設立後の実務を担当する事務局を設置します(通常は総務部内等に設置)。
► 事務担当者を選任します。
► 設立後の実務を担当する事務局を設置します(通常は総務部内等に設置)。
► 事務担当者を選任します。
4. 社内関係者への説明
► 設立後のトラブルを避けるため、主要株主や労働組合等がある場合には、その代表者等へ事前に制度を説明し理解を得られるようにしておく必要があります。
5. 規約等の原案作成
► 規約や従業員持株会設立契約書等の必要書類の原案を作成します。
► 規約に退職時の株式の買取方法や買取金額を必ず明記しておきます。
► 規約に退職時の株式の買取方法や買取金額を必ず明記しておきます。
6. 発起人会等の開催
► 発起人会で規約を定め、役員候補者を選任します。
► 設立総会を開催し、役員を選任します。
► 理事会を開催し、理事長を選定します。
► 設立契約書等の書類を作成する必要がありますが、株式会社等とは異なり官庁への届出や登記は不要です。
► 設立総会を開催し、役員を選任します。
► 理事会を開催し、理事長を選定します。
► 設立契約書等の書類を作成する必要がありますが、株式会社等とは異なり官庁への届出や登記は不要です。
7. 契約の締結
► 事務作業を委託するため、会社と従業員持株会間で契約を締結します。
► 拠出金を給与から天引きする場合には、労組と協定書の締結が必要になります。
► 拠出金を給与から天引きする場合には、労組と協定書の締結が必要になります。
III. 従業員持株会の運営
従業員持株会の運営上必要となる主な事務手続きについて、以下に概要を記載します。
1. 入会時の事務
► 入会届出書等により、入会受付けを行います。
► 会員台帳の作成・管理等を行います。
► 会員台帳の作成・管理等を行います。
2. 日常事務
► 積立金と奨励金の個人別残高管理を行います。
► 自社株の買付け
⇒理事長名に名義換えを行う必要があります。
► 株式の配分
⇒取得した株式を各会員の拠出額に応じて配分します(決算時に持分残高を会員に通知)。
► 自社株の買付け
⇒理事長名に名義換えを行う必要があります。
► 株式の配分
⇒取得した株式を各会員の拠出額に応じて配分します(決算時に持分残高を会員に通知)。
3. 決算時の事務
► 配当金の受領
⇒名義人である理事長宛に一括支払いされた配当金を、決算期末日時点の各会員の持分に応じて配分します。
► 1年に1回以上、会員持分の個人別計算書を作成し、会員へ通知する必要があります。
► 各会員の年間配当額が3万円を超える場合には、持分の管理信託の受託者である理事長が支払調書(信託に関する
計算書)を作成して、1月31日までに所轄税務署長へ提出する必要があります。
⇒名義人である理事長宛に一括支払いされた配当金を、決算期末日時点の各会員の持分に応じて配分します。
► 1年に1回以上、会員持分の個人別計算書を作成し、会員へ通知する必要があります。
► 各会員の年間配当額が3万円を超える場合には、持分の管理信託の受託者である理事長が支払調書(信託に関する
計算書)を作成して、1月31日までに所轄税務署長へ提出する必要があります。